冒険のはじまり

三日目(8月9日 前半)

旅の最終日は、私にとって最も冒険的なことをする予定だ。

それは鞍馬山へ行くこと。しかも本殿だけでなく奥宮まで行き、そこから貴船へ降りて貴船神社へ参拝する。このルートはかなりの山越えになる。

普段から山歩きをしているような人にとってはなんて事のない距離と高低差かもしれないが、日頃アウトドアとは無縁な私からしたら、大変な挑戦である。しかもこの暑さだ。

前の晩から緊張していた。しかも!鞍馬へ行く叡山電車が土砂崩れで、途中の駅から鞍馬までの間を動いていないことが判明。

これには焦った。しかし、よく調べたらその区間を代替えのバスが出ているのと、他に路線バスも走っていることがわかりひと安心。落ち着け、と自分に言い聞かせた。

なぜ鞍馬山へ?

なぜ、鞍馬なのか、ましてなぜ奥宮まで行くのか。

それはオーラソーマに関わっている人ならピンとくるかもしれない。

オーラソーマのシステムの背景には、神智学でいうところのアセンデッドマスターの存在がある。次元上昇したマスターたち。

わかりやすく言うなら、人間を卒業したような存在や、元々宇宙的な存在たちがいて、私たち人類を導いている。

その中の一人というかひと組が「サナトクマラ&レディヴィーナスクマラ」のカップルなのだ。サナトクマラは約650万年前に、地球を救うために金星からやって来たマスターだ。

鞍馬寺はその存在を「護法魔王尊」と呼び、他の二つの尊天(毘沙門天、千手観音)と共にお祀りしている。

鞍馬寺は770年、鞍馬山に鑑禎上人が導きによって庵を結んだことから始まった。牛若丸が修行を積んだ場所としても知られている。

途中は割愛するが様々な変遷を経て、昭和22年(1947年)に、宗派も国境も人種の垣根も超えて、ひたすら人類の覚醒を目指す「鞍馬弘教」として生まれ変わったのである。

歴史ある寺がそれまでの天台宗を離れ、鞍馬弘教の総本山を名乗ったのだから、驚くべきことだ。

私は以前から、金星とは並々ならぬ縁を感じてきた。あえて言えば、私の宇宙的な故郷は金星だと思っている。

それなのに金星からやってきたアセンデッドマスターと、これほどダイレクトに繋がっている鞍馬に、一度も足を運んでいないことがずっと気になっていたのだ。

念願かなって鞍馬詣

やっと念願叶って鞍馬詣での機会である。

何としても奥宮まで行きたい。奥宮には「魔王殿」がある。

さて当日。地下鉄とバスを乗り継ぎ鞍馬まで無事にやってきた。

バスを降りた途端に真夏の日差しとセミの大合唱が、暑さを助長する。

しかし怯まず歩き始めた。石段を昇り立派な仁王門へ。ここからが真に神聖な領域である。


お社や石碑などが行く先々に現れる。道は全てが石段や上り坂である。

どこもかしこも歴史を感じさせる荘厳さがある。

あえてケーブルカーは使わず、山道や参道を歩くと決め、長い石段を昇り始めようとしたら、足元に金蛇(カナヘビ)がいることに気付いた。やけにぷっくりとしたお腹が、呑気で微笑ましい感じである。かなり近づいても全く逃げる気配がない。


この旅の初日、清水寺に現れた二羽の見知らぬ鳥もそうだったが、生き物が迎えてくれることが度々あった。きっとこの金蛇も私を迎えてくれているのだと感じた。

数々のお宮やお社などに足を止め、手を合わせ参拝しながら先へ先へと進んでいく。

余談だけれど、鞍馬山には二つの弁財天社が祀られていた。「白長弁財天」と「巽の弁財天」である。

私は金星とのつながりと同じく、弁財天様とのご縁も強烈に感じているので、これには嬉しかった。どちらにも丁寧にお参りさせていただいた。

いつの間にか相当高いところまで登ってきたようだ。視界が開けると、遠くの山々が見えた。この場所も同じくらいの高さにあるということだ。

暑さは相変わらずだが、この高さまで登って来たことで、きっと最後まで歩き通せるという自信のようなものが湧いてきた。鞍馬寺の本殿まであと少しである。